メンブレンフィルトレーションの基礎知識

I部 ろ過の基礎知識とメンブレンフィルターによるろ過
3. MF/UF/ROメンブレンフィルターの分離の特徴
3.2  UF(限外ろ過)
1) 限外ろ過とは
(1) JISの定義
「限外ろ過」(ultrafiltration)とは、「分子量数百〜数百万程度の溶質又は粒子をろ過によって分離する操作又はその技術」1)をいい、この分離にもちいられる膜が「限外ろ過膜」(ultrafiltration membrane)1)である。
(2) 限外ろ過の歴史
木村らによれば、限外ろ過の歴史は古く、その発端は透析法にあるという。これには、初めは天然素材が使われたが、やがてコロジオン、セロファンといった人工膜が用いられるようになった。透析では駆動力が濃度差による拡散なので、透過速度が小さいことが問題であり、これを補うために、一次側に圧力をかけて、水とともに塩類も透過させて分離する方法が、1900年当初に考えられた。これが限外ろ過法のはじまりという。2)
2) UFメンブレンフィルターの構造と特徴
(1) UFメンブレンフィルターの構造
MFメンブレンとの大きな違いは、一次側と二次側の構造のことなることであり、この膜は非対称膜とよばれている。
(2) 非対称膜(asymmetric)とは
「非対称膜」とは、「同一素材で、ち密層と多孔質支持層からなる膜」1)であり、「 異方性膜(unisotoropic membrane)」ともいう。
ここで、 「多孔質支持層(porous support)とは、「非対称膜及び複合膜において、表面のち密層(dense layer)を支持する多孔質の層」1)をいう。
ち密層の目が細かいので、ろ過における圧力損失が大きく、この影響をできるだけ少なくするために、ち密層は非常に薄く(通常1μm以下)できている。
(3) 膜の分離特性指標
膜の分離特性指標として、MFでは細孔孔径があるが、UFメンブレンの細孔孔径は100μm以下といわれており、ポアサイズによる分類でこれを管理することは、現在の技術ではできない。
それゆえ、分離対象物を指標とした分類が一般的となっている。すなわち、対象膜で分離できるマーカーの分子量で分類を行っている。代表的なマーカーには、Viamin B12、チトクローム c、γグロブリン、ブルーデキストランなどがある。
3) 分離の特徴
図3-2は限外ろ過における物質の保持(retention)を示したものである。
この図が示すように、目的は高分子物質の濃縮/分離である。サイズの小さい塩類は、ち密層を通過するが、ち密層の細孔の目より大きな高分子物質は、通過できず、ち密層の表面に保持される。
なお、限外ろ過ではその膜の構造上、ピンホールのまったくないものを作ることは難しく、高度の除菌性能はあるものの、完璧がもとめられるいわゆる”滅菌”の目的では一般には使われてないのが現状である。

4) 膜透過理論
(1) 膜境界面(Boundary Layer)での流体力学的解析
限外ろ過での膜の透過現象は一般につぎの式で説明できる。3)
J = ΔP / (Rm + Rp) (1)
ここに、J;単位面積当たりの透過流量、 ΔP;膜の一次側と二次側の圧力差、Rm;流れに対する膜による抵抗、 Rp;流れに対する濃度分極による抵抗
限外ろ過は一般に高分子物質の濃縮を目的として行われるが、この場合、ろ過が進み境界層ができはじめると、Rpの影響が目立ちはじめ、透過流量は、次式のようになる。
J = K In Cm/Cb (2)
ここに、Cm;膜面での溶質の濃度、 Cb;溶液の溶質の濃度、 K;捕捉される溶質の拡散度、溶液の粘度、システムの温度及び膜面での剪断力にもとづく物質移動係数(mas transfer coefficient)である。
境界層がひとたびゲル状になると、Cmは、ゲル層が形成される時点での巨大溶質濃度であるCgで一定となり、(2)式はつぎのとおりとなる。
J = K In Cg/Cb
与えられたろ過溶液では、CgとCbは一定なので、流束は、物質移動のみの関数となる。 このようになると、圧力をあげても、流量は増加せず、溶液の溶質の濃度Cbを減少させるか、境界層がゲル化するときの濃度Cgを増加させることができれば、流量は増加する。
(2) 濃度分極とそれへの対応
濃度分極とは、「一次側の膜の近傍において、溶質の濃度勾配が生じる現象」1)をいい、限外ろ過でよく見られる現象である。
すなわち、限外ろ過にあっては、高分子物質が膜面で濃縮され、高分子物質の濃度層が形成され、やがてこれがゲル化する。 このような現象がおこると、前述のごとくろ過流束は著しく現象する。
それゆえ、この現象によるろ過流束の低下を防ぐには、濃度分極がどの時期におこるかを予測し、分極がおきたときにそれを最少限にとどめるための手だてをこうじることが大切である。
実験室規模での少量のろ過では、攪拌が、またプロセスろ過では、TFF(Tangential Flow Filtration)または、クロスフローをよばれているろ過方式が一般的に用いられている。
5) おもなアプリケーション
(1) 試験・研究分野
タンパク・ペプチドの濃縮・分離
タンパク・酵素などからの脱塩
(2) 製薬・食品製造分野
タンパクの濃縮
タンパク・酵素などからの脱塩
細胞培養液からの生産物の分離・精製
(3) 化学工業分野
メッキ液の回収

参考/引用文献
1) JIS K 3802-1995 「膜用語」(1995)
2) 木村、酒井、白田、鵜飼編著、「膜分離技術マニュアル」、アイピーシー出版(1990)
3) "Molecuar Filtraton", Millipore Application Report, AR801

 





フィルトレーションの基礎知識-目次
フィルトレーションの基礎知識-1.1 ろ過とは
フィルトレーションの基礎知識-1.2 ろ過対象物によるろ過の分類
フィルトレーションの基礎知識-1.3 代表的なろ過材とろ過対象物の大きさ
フィルトレーションの基礎知識-2.1 ろ過における分離メカニズム
フィルトレーションの基礎知識-2.2 ろ過分離メカニズムの基本
フィルトレーションの基礎知識-3.1 MF(精密ろ過)
フィルトレーションの基礎知識-3.3 RO(逆浸透ろ過)
フィルトレーションの基本用語集









   ホーム    |    規定/商標    |    サイトマップ    |    Visit www.entegris.com
 © 1994-2006 Entegris, Inc. All rights reserved.